福島の正月と言えばイカニンジンにこづゆ 郷土料理パラダイス!
新年明けましておめでとうございます♪ 昨年中は、ワタクシの趣味全開おいしいもの漫談に沢山お付合い頂きましてありがとうございました。
……なに? まだ年明けてない?フライング?
やだなあ、もう。未来に生きてるって素晴らしいじゃないですか。つまり年末年始には仕事納めとかいう不思議な力とオトナの事情が働いて、タイムスリップすら可能になるんですねー。不思議だねー。
さて。年始めですが、みなさま美味しいおせち料理を食べますよね。年末年始は、美味しいご馳走が沢山。それも含めて実にめでたい。
福島でも他県と同じように沢山のご馳走を食べるのですが、その中で他の地域にはあんまりないモノとしては年始に(まあ、普段からも食べてますけどね)、最近割と県外でも有名になってきた(?)「いかにんじん」なんかを良く食べます。(主にあぶくま山系~中通り北・中部)
いかにんじんって何?
「いかにんじん」というのは、いかとにんじんです。(身も蓋もありませんね)もうちょっと詳しくお話すると、細切りにしたスルメイカを使い、同じく細切りにしたにんじんと一緒に独自の醤油ベースのタレに漬け込んだもの。
家庭によって味付けは違いますが、にんじんの適度なシャキシャキした歯ごたえとスルメイカのじわじわくる旨味が上手に調和されたモノは、これがご飯のおかずにも酒の肴にも、なんとも絶妙な珍味になるのです。スルメイカの噛めば噛むほど味がしみでてくるあの旨味エキスが、たっぷりと漬け汁にみなぎっている感じです。
文献で大正時代頃の記録にも残っていたのは自分でも読みましたが、古くは江戸時代からすでに食べてたみたいです。これは単なる名物という以上に福島の食文化そのものですね。やっぱり、美味しいものは世代を超えて引き継がれていくものなのですね。今の福島の美味しいものも、この調子でどんどん後世に残していきましょう♪
ちなみに、このいかにんじん。一般家庭や料理店などでも漬けられている他、福島のお漬け物専門店も沢山作っています。いかにんじんの本拠地とも言うべき県北地域では、たとえば福島市飯坂町の佐久商店さんや伊達市霊山町の福島りょうぜん漬け本舗さんなどが有名です。
他にもいわきの西野屋さん、郡山の小田原屋さんなど名だたる福島県内の有名漬物店もいかにんじんを出していますし、県内のスーパーマーケットではオリジナルのいかにんじんを作っているところもあります。それぞれの味の食べ比べをしてみるのも面白いかも知れませんねー。
ポテトチップスいかにんじん味も登場
ちなみに、この「いかにんじん」ですが、数年前にポテトチップスで有名なカルビーさんが、まさかの「ポテトチップスいかにんじん味」を限定発売。
いくらカルビー社長が福島県出身(ちなみに、なぜか同じくポテトチップスで有名な湖池屋さんの社長も福島県出身らしいのです。)だからって、ちょっと奇をてらうにしてもやりすぎでは……と思われたにも関わらず、フタを開けてみれば、そこは美味しさに手を抜かないカルビーの本気。
寄せられたのは「意外と美味しい」「むしろクセになる」「お土産にピッタリ」などという感想の山々で、当初の生産量は1週間でほぼ完売。再発売と増産を何度も繰り返す羽目になりました。さすがです。
去年47都道府県の名物味ポテトチップスが企画発売されたのも、たぶん先駆けになったこの「いかにんじん味」の成功あってのこと??かもしれません。(てきとう)
最近はオヤツカンパニーさんまでもが、ベビースターラーメンいかにんじん味を出したとか。いいですねー。作る側も食べる側も味しめてますねー(笑)せっかく受け継がれてきた文化はやっぱり、どうせならこうして身近にもどんどん楽しまなくちゃ。
つまり、結論。いかにんじんはすごい。いかにんじんは色んな意味でみんなおいしい。(笑)
「豆かずのこ」「こづゆ」。福島のお正月を彩るハレの日の料理たち
他にも「豆かずのこ」という、かずのこと浸し枝豆をカツオ出汁に合わせたものもお正月の福島では良く食べまして。マメで達者で子孫繁栄……という縁起物の掛け合わせですね。
これもまた、お酒のおつまみにも絶品。ほのかに漂うカツオ出汁の香ばしさの中で、かずのこのコク味とぷちぷち感が、こざっぱりとした枝豆のとぅるんとぅるん♪ な食感や旨味と合わさって、お酒と合わせると割と延々食べていられます。もう、やめられないとまらない。
なお、これも普段から福島県内の一部スーパーなどでも販売されておりまして。合わせる日本酒をあまり選ばない万能のおつまみとして、私はしょっちゅう買っていたりします。
また、会津ではお正月料理として「こづゆ」も定番です。ホタテの貝柱を干したものを主役に、鶏肉、きくらげ、里芋、大根、にんじん、ごぼう、糸こんにゃく、豆麩、銀杏などを、それぞれ角切りや銀杏切りにしたハレの日のおもてなし料理です。おみやげにもされているので、会津観光した人は見聞きしたことあるかも知れませんね。ホタテ出汁が薫る、なんともめでたい味わいなのです。
福島のお雑煮って、どんなもの?
ところで、お正月といえばあとはお雑煮。みなさま、お雑煮って日本全国で味が全然違うってこと、知ってました? たとえば京都では白味噌に丸餅を使ったものをお雑煮と呼ぶらしく、山陰では小豆雑煮といって、おしるこみたいなもの?をお雑煮と呼ぶらしいのです。(や、それらはそれらでメチャ美味しそう……)
しかも、隣県などの近場同士でも微妙な違いがあったりして、お雑煮の流派は地域ごとに千差万別。地域それぞれに独自の文化と美味しさが沢山控えていたりして。
こういうのって、わくわくしますよねぇ。え? しませんか? 私だけですか??
ともあれ。そんな中で福島のお雑煮は、カツオ出汁を利かせた醤油ベースの透明感ある澄んだスープに、鶏肉を合わせます。そこに酒やみりんをちょいと足して、味を調整します。意外かも知れませんが、福島のお雑煮はかなりあっさりとした上品な味わいなのです。
鶏肉はもちろん普通の若鶏でも良いのですが、福島は伊達鶏や川俣シャモ、会津地鶏など地鶏が美味しい地域ですから、せっかくのお正月はこういうのも使ってみたいですね!鶏の旨味も当然、スープに溶け込みますので。
その他の具材は主にささがきごぼう、短冊切りに小さく切り分けた人参と大根、それに凍み豆腐など。さらにナルトを入れるご家庭もあります。ここに、角切りにしたお餅を焼いてから投入。じゅわぁぁぁっ…と音を立ててお椀の汁の中に沈んでいくアツアツの香ばしい焼きたてお餅に、一緒に入った凍み豆腐ともどもスープの旨味をたっぷりと吸わせるのです。まるでカップうどんの油揚げみたいに、たっぷりと、旨味滴るひたひたのジューシーになるまで。
しかもですね。以前の「天のつぶ」記事でも触れたように福島はお米が世界トップクラスに美味しいので、お餅も当然美味しいのですよね。特につきたてのお餅なんては味も香りも食感も、いわゆる最の高ですよ。焼いておこげのように香ばしくカリカリになった表面と、とろーりとろける中身の食感のコントラストが実に魅力的。たっぷりの旨味が溶け込んだ雑煮のスープと絡み合って、気持ちまでお餅同様トロットロに幸せになれます。
ここまで来るともう一刻も早く食べたくなりますが、まだ終わりじゃないぞよ。もうちっとだけ続くんじゃ。お餅は色んな意味で焦って食べるのは禁物です。
……なんていいつつも、次で最後の仕上げ。三つ葉を添えて完成です♪ 家庭によっては、ほんのり柚子の風味を利かせたりすることも。出汁と三つ葉と柚子の香りに、香ばしい焼きたてお餅の匂いも絡んだ福島のお雑煮は、私の大好物です。もう大好き過ぎる。出来ればお正月以外にも食べたいね……。
まとめ
最後には毎度お馴染みの、お料理に合わせるお酒。お正月の多彩なご馳走にも、一品一品ごとに違ったお酒との相性がありますが、それら全体に対してどう合わせるべきかは、迷うところがあります。
そこで今回はお正月だしちょっぴり贅沢に。福島のお酒の大吟醸酒、出来れば観評会受賞酒や海外でのコンクールに入賞したものなどを選んでみるのはいかがでしょうか。
福島県の金賞受賞銘柄はこちら
福島のお酒は全体的に、大なり小なり「香気」とも言うべき実力を感じさせるオーラというか、香りのヴェールをまとっています。それはもう、お正月の華やかなお料理に合わせるのにもピッタリ。織り成される香りと繊細な味わいは、もはや芸術の域とも言えましょう。
昨年も例年通り、数々の晴れ舞台で華々しく活躍して評価された福島のお酒。その真髄を存分に味わうべく、いずれも実力派揃いの福島から、お好きな蔵のものを試してみてください。一年の始まりを、幸せな気持ちで迎えることが出来る……はず?
他にも、お正月に初詣のご祈祷をお願いすると御神酒が貰えるような神社もあるので、そういう所から頂いてきた御神酒を嗜むのもいいですね。私は福島市の南福島にある黒岩春日神社で貰える濁り酒が、実は毎年の楽しみだったりして。(たしか、神社の地元で採れたお米だけを使って郡山の笹の川酒造さんに造って貰っている希少な限定酒だったはず)
あとは、奥の松や末廣などで出しているスパークリング日本酒なども華やかで良いと思います。会津では「新鶴のあわ」というスパークリングワインなどもあります。
いずれにしてもせっかくの一年のはじまりなので、みなさまにとって、それぞれ思い入れのあるお酒を合わせるのが一番かも知れませんね。物語は、もっとも味わい深い肴でもありますから。
さてさて。来年もどうか、福島TRIPと福島のお酒やグルメをより一層、よろしくお願い申し上げます。またゆるゆると、美味しく楽しんで頂ければ幸いです。
よいお年をお過ごしくださいねー。