伊東 健汰

漁師さんに学ぶ! 水産漁業が体験できるスタディーツアーに参加してきた

いわき観光

東日本大震災をきっかけに福島の大学生が発足した、地域の人々との交流を通して、福島を感じて考えるスタディツアーを企画・実施する学生団体「スタ☆ふくプロジェクト」。

震災後、原発からの様々な影響を受けつつも再び前に進もうとしている、“福島で働く人々”にスポットを当てたプロジェクトとして、その人たちの思いや取り組み、苦悩を全国に伝えています。以前、福島TRIPでは会津ツアーに同行し、スタ☆ふくの活動を紹介させて頂きました!

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そのスタ☆ふくが、先月8月22日〜23日に1泊2日の日程で、震災から5年目を迎える、いわきの漁業にファーカスしたスタディーツアーを実施。そこに携わる人との交流や体験を通して、いわきの“今”を感じる事ができるコンテンツが満載のこのツアー。今回も実際に同行させてもらいました!

地域と参加者をつなぐ架け橋になりたい”と考えるスタ☆ふくの想いを随所に感じた、ツアー2日間をまるっとご紹介します。

今回のテーマは“いわきの今”。いわきの水産漁業ツアーに同行!

22日、いわき駅に集合しバスに乗り込むツアー参加者達、みなさん初対面という事でなんだか緊張ムード。大学生や教員、社会人の方や外国人の方も参加していました。参加者の方々と仲良くなる事ができるのもこのツアーの大込みの1つ。みなさん緊張しつつも早速、お互いに自己紹介をしていました。さて、今回のいわき水産漁業ツアーの行程は以下です。

【8月22日(土)】 
いわき駅 集合
〜小名浜魚市場へ移動(バス)〜
→放射性物質検査体制、市場 見学
→昼食
→福島県水産試験場職員による講演
→地元漁師の方々との交流プログラム
→海鮮BBQ
→宿舎チェックイン(古滝屋)

【8月23日(日)】 

古滝屋 発
→鰹節削り見学・講演
→干物加工体験・昼食
→ワークショップ
いわき駅 解散

 

今回も見所が多そうで楽しみです。では早速、最初のプログラムが行われる小名浜魚市場に向かいますよ!

【1日目】いわき水産漁業を学ぶ「小名浜魚市場」&「漁船体験」

いわき駅からバスに乗り30分ほどで小名浜魚市場に到着! 以前の魚市場が老朽化したことにより、今年3月に竣工された新しい小名浜魚市場は最新の設備を持ち、水産物流の拠点としていわきを支えています。

原発事故の影響により操業の自粛を余儀なくされている状態のいわきの漁業ですが、福島県による25,000件を超えるモニタリングの結果から安全が確認されている魚種に限定し、小規模な操業と販売を試験的に行う「試験操業」がこちらで行われています。

その為、いわき地区で水揚げされた魚は一度、小名浜魚市場に集められ、「選別、計量、放射能検査」が行われています。まず放射能の検査体制を見学してきました!

こちらでは魚貝に含まれる放射能の検査を行います。魚貝をきれいに捌き、規定の量に分けて検査機にかけるというもの。

使われる検査機は、さらに高性能な機材の導入したようで、以前よりも1度の検査に必要な魚の量や手間も減り、時間も短縮されているとのことでした。30分かかっていた検査は数分で、魚のミンチが1キロ必要だったのが100グラム以下できるようになり、機材の値段は300万円から1,000万になったと苦笑いを浮かべていました。

検査を終え、安全が確認された魚介類のみが出荷されていきます。 右の白い機械の中に検査対象の魚をセットします。左のパソコンには「不検出」の文字が出ていますね!
ここでしっかり検査した上で、福島県内や全国の市場にも運ばれ、スーパーや飲食店などで提供されています。

しかし、震災前と比べると現在の漁獲量は3~5%程。地元であっても購入する事は難しいとの事。案内して頂いた職員の古川さんは、

「試験操業の対象となっている魚種に関しては、検査をしてもほとんど検出されることはないが、消費者の不安を少しでも和らげるために行っている。いつか消費者に受け入れられる日が来ることを待ち望んでいる。」と述べていました。

いわきの漁業の実態を改めて知り、参加者の方々も神妙な面持ちで話を伺っていました。

あいにくの天気、漁師さん達の粋な計らい

昼食、講演を終え、お次は本ツアーの目玉とも言える漁船体験!
シラスとホッキ貝の漁を体験する予定だったのですが、ここで悲しいお知らせが……。この日は台風15号の影響もあり、波が非常に高く漁には出られないとのこと。

これは流石にどうしようもないと諦めかけていたところ、漁師さんが察してくれたのか漁船に乗せてくれました!

筆者自身、操舵室を見るのなんて初めてで少し興奮。参加者の方々も盛り上がりつつも、「波が高くなければなぁ……。」といった表情は隠せずに海を眺めていると、おもむろに漁師さんが船のエンジンをかけはじめました!

なんと、漁師さん達の粋な計らいで、防波堤の内側の波が弱いところをゆっくり一周していただきました! これには参加者も大喜び^^

さて、漁船体験の後、体験プログラムへと移ります。ここでは漁師さんが使うロープの結び方を実演で学ぶ事に。

「なぜロープ?」とお思いでしょうが、漁師にとってロープを素早く結べることは絶対に必要なスキルでして、実演を通して“絶対に解けない、でも解きやすい”漁師直伝の結び方を教わりました。途中から、ツアーの参加者ではない方々も参加していましたが、漁師さんにそんなことは関係ありません! 1人1人に一生懸命教えてくれます^^

 

手頃な物がないからと参加者の腕に結んで実演(笑)。

総勢70人! ツアー初日の締めは「海鮮BBQ」

お次はホッキの殻剥き! 漁師さんは簡単そうにこなしますが、やってみると貝柱をうまく切るのに悪戦苦闘。
苦労して剥いたホッキをその場で水洗いしていただきます。剥きたてのホッキの味はこれまた格別なんでしよ! 流石、東北有数と言われるいわきのホッキです。甘みが強く、いくつでも食べられそう♪

そして今日の晩餐は海鮮BBQ。先ほど剥いたホッキ貝を始め、漁師さん達が様々な海の幸を用意してくださいました。参加者同士はもちろん、漁師さんもスタ☆ふくツアータッフも一緒になり、総勢70人。盛り上がらないわけがない! お酒の席でしかできない漁師さんの本音なども聞く事が出来て大満足です(笑)。

 

朝の緊張もすっかり解けて、今日一番の笑顔を浮かべています^^
楽しい時間はあっという間に過ぎ、宿へと向かわなくてはならない時間がやってきました。

今日のお宿は「古滝屋」という旅館で開業はなんと1695年の舗の旅館です! 震災の影響を受け休業を強いられますが、2012年になんとか営業を再開。現在も復旧途中ということで素泊まりの宿泊のみとの事でしたが、いわき湯本の源泉かけ流しの温泉は最高でした♪

 

【2日目】いわきの水産加工を学ぶ「鰹節加工」

夜が明けてツアー2日目です。1日目はいわきの漁業の中でも漁師さんに着目しましたが、本日はいわきの水産加工業に焦点を当てて行きます!

古滝屋を出発して、まず向かったのが鰹節を製造している山一中田商店。震災前は日本で唯一、生のカツオから削りまでの工程を一貫してお店で行っていることで知られていましたが、震災の津波によって以前のお店は流されてしまいました。それでも中田さんは“この地で鰹節を作り続けたい”という強い思いを持ち、営業を再開させたのだと言います。

機械を使って鰹節を削る様子を見学。

『ゴリゴリ…』

鰹節が削られる音とともにツヤツヤの鰹節がどんどん出てくると同時に、鰹節の芳ばしい香りが部屋中に広がっていきます。

お店のご行為で頂くことに。みなさんは、削りたての鰹節を食べたことはあるでしょうか?

実際に一口食べると優しい風味と凝縮された旨みが口いっぱいに広がるんですよ!本当にビックリです。

『パクパクパク…』

手が止まりません(笑)。

すっかり鰹節のとりこ、しかしツアーは進む……。後ろ髪を引かれつつも山一中田商店を後にします。

さて、今ツアーの見学・体験プログラムも残す所あと1つ、最後の体験を行うニイダヤ水産へと向かいましょう。
ニイダヤ水産は干物の加工と販売を行っているお店で、干物ができるまでの工程を実際に体験しながら学びました。

今回は、イワシのみりん干しを作るということですが、まずは魚を捌かなくてはなりません。
私を含め、ほとんどの参加者は魚を捌くのは初めて!

ニイダヤ水産の方々はあっという間に魚を開き、骨と内臓を取り除いていきますが、参加者の皆さんは大苦戦です。そんな私は骨だけでなく、大切な身までも取り除いてしまうという失態(汗)。

さすがプロの方が捌いたイワシは美しい……。

さて、下処理を終えたイワシ達はしっかりと水洗い。他の加工場では水洗いすらしない所もあるそうですが、とにかく無添加にこだわるニイダヤ水産では水道水の塩素すらも添加物とみなし、より手間のかかるアルカリイオン水で魚を洗浄。

綺麗に洗い終わったイワシを漬け床に漬け、味を染み込ませた後、乾燥室でイワシを乾燥させて旨みを凝縮させます。乾燥が済んだ干物を後日、自宅まで届けてくださるということでとても楽しみです^^

2日間を振り返りつつ、いわき漁業のこれからを考えよう

2日間の様々なプログラムを通して、いわきの漁業がどんな問題を抱えているのかを学ぶ事になった今回。何と言ってもこのツアーはただの旅行ではなく、スタディツアー。2日間を通して学んだ事を参加者同士だけではなく、漁師さんを交えて共有し合います。

 

自分は今まで、”いわきに対して、知らない事だらけだった”と多くの参加者が感じ、全国の人に本当のいわきの姿を知ってもらうにはどんなアクションが必要なのか。最後のワークショップでは意見交換が行われました。

 

まとめ

震災から5年目を迎えるいわきの現状や抱える問題を改めて知る機会になりました。苦しい状況を強いられている方々や、そこで働く人たちの思いを直に感じる事ができる、スタ☆ふくツアーの一番の魅力ではないでしょうか。文字を読んだり、映像を見るだけでは分からない“リアルな声”、本当の意味で、「学ぶ」事が出来たと思います。
スタ☆ふくはいわきツアーの他にも、会津や東和などで定期的にツアーを企画しているのでぜひ参加してみてはいかがでしょうか?
福島を感じて考えるスタディーツアースタ☆ふくプロジェクト

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