福島の日本酒の美味しさを語りつくす。福島呑気酒 Vol.1 金水晶(福島市)
福島の日本酒が近年、国内外のコンクールで次々と輝かしい成績をおさめています。2019年5月にも、明治時代から続く全国新酒鑑評会で、前人未踏となる7年連続での金賞受賞数日本一を達成。
今や福島は世界的な日本酒名醸造地の一つであり、歴史的な黄金期を迎えているといえるでしょう!
全国新酒鑑評会の審査結果が今日発表され、福島県内の蔵元が出品した22銘柄が金賞を獲得し、都道府県別の金賞受賞数で7年連続9度目の「日本一」を達成しました。7年連続は過去最長で、福島県の酒造りの技術の高さを改めて示しました。 pic.twitter.com/o0tVJx1j29
— Channel rfc【ラジオ福島】 (@radio_rfc_japan) May 17, 2019
しかも福島では広い県内各地に中小規模の酒蔵が点在しており、単純に「美味しい」「高品質」というだけでなく、同じ県内であっても地域ごとに異なる個性が楽しめる点も大きな魅力。
今回は、まだ知られていない福島の各蔵元それぞれの魅力を、日本酒大好きライター林の独断と偏見による感想、そしてあふれる酒蔵への愛で語っていきます! どうか呑気に楽しくお付き合いください。
金水晶酒造店(福島市)
最初にご紹介するのは、現在、県庁所在地である福島市で唯一の造り酒屋を営んでいる、金水晶酒造店(きんすいしょうしゅぞうてん)です。
創業は明治28年。蔵元の近くにあった金山と、名水湧き出る水晶沢からその名を取ったのだそうです。全国新酒鑑評会の金賞受賞数で福島県が日本一となるその一角を担う常連蔵。手造りにこだわり、ていねいに醸されたお酒には無二の個性があり、県都福島市の誇りともいえる味わいです。
ラベルに記された図形のようなロゴマークは、それぞれ「金」「水」「晶」の字をイメージしたもの。ブランドエンブレムのようで、とても印象深いですね。
金水晶酒造店が目指すお酒の方向性は、福島の地酒としてのこだわり。
「福島の気候風土、地元のよい米と地元出身の造り手を大切に、何よりもお客様に喜ばれる酒造りを心がけている」とのことで、温故知新の精神を持ちながら地元の人に愛される酒造りをしている金水晶酒造店。これからも応援したくなりますね!
地域の文化と風土
(市の南東、花見山から見下ろす福島盆地)
福島市は、周囲を山々に取り囲まれ、阿武隈川を中心に形成された福島盆地に位置し、中核市の一つでありながら質の高い農作物が作られています。肥沃な土地と、季節や昼夜による寒暖差が、農作物の栽培に適しているのです。
特に桃や梨、葡萄、林檎などの名産地として知られていますが、これらの果樹栽培は、かつて日本の主要産業であった生糸生産のための桑畑から、果樹への大規模な転換が図られた名残です。
もちろんお米も例外ではなく、米食味ランキングでは最高位となる特Aランクの常連地域。人気アイドルグループTOKIOが毎年自分たちの米作りをしているTV番組でお馴染みの田んぼも、福島市にあるというウワサも。
また、金水晶が使用している水は、蔵元の近くにある金山から水晶沢へと注ぐ湧水。明治初年にこの地を訪れた明治天皇に献上された際、陛下が「金明水」と直々に名付けられた由緒ある名水です。
福島市の郷土料理
福島市は昔から米沢や仙台・相馬などを繋ぐ交易の拠点。生糸産業が盛んな頃には周辺地域からの生糸の集積地としても栄え、その食文化は、山あいの交易都市ならではの様相です。
代表的な郷土料理は「いかにんじん」という、干したスルメイカとニンジンを細切りにして漬け込んだお正月料理でもある保存食で、北海道の松前漬けの元になったとの説もあります。
他にも、阿武隈川で獲れた鮭を米麹で漬け込んだ「阿武隈の紅葉漬」も、江戸時代から続く代表的な郷土食です。
金水晶酒造店のお酒は、こうした食文化によくマッチする、すっきりとした飲みやすさと同時に芯の強さを感じさせる味わいが身上です。
金水晶の「ここが好き!」
金水晶のお酒といっても大吟醸や純米大吟醸、純米吟醸などたくさんの種類がありますが、私としては、この蔵の酒には共通する「きらめき」のようなものを感じています。
そのきらめきはまるでその名にある金と水晶のようで、口に含むと金銀砂子がキラキラと輝きながら目の前に降り注いでくるような、それはそれはロマンティックな味わい。
今年、2019年(2018年醸造年度)の鑑評会金賞受賞酒は、まさにそれを体現したかのような美しい味わい。目が醒めるような眩(まばゆ)さは、水晶というより、もはや洗練されたブリリアントカットのダイヤモンドといえるかもしれません。
気高く、美しく、稀有。決して錆びない、決して砕けない魅力を持った金水晶。手間をかけて少量ずつ仕込む小さな蔵だけに、味は折り紙つき。
今年6月に行われたG20大阪サミットで、各国代表に振舞われた銘酒の一つにも選ばれています。
しかしその生産量の9割以上が福島市内の「通」のあいだで消費されつくしてしまい、地元福島市民ですら口にした経験が少ないのも事実。この希少性もあいまって、まさに宝石のような存在といえるでしょう。
金水晶おすすめの楽しみ方とペアリング
金水晶は、郷土料理の「いかにんじん」をはじめとして幅広い料理と合わせられるのですが、私の個人的な好みでは特に「肉には金水晶!」をぜひおすすめしたいところです。より正確には「肉汁には金水晶」でしょうか。
たとえば福島市の隠れた名物である「焼鳥」であれば、砂肝やレバーよりも、モモやボンジリなどとの相性が良いです。
金水晶の、完熟したもぎたての桃からほとばしるハッとするような瑞々しさやジューシーな旨みを感じさせる「むろか生」を、肉汁滴る美味しいお肉に合わせてあげると…
(伊達鶏の焼き鳥。福島市「鳥安」)
金水晶のきらめくような味わいが口の中で肉汁と絡み合い、その輝きを増していきます!
宝石のように美しく芯が強い金水晶の味わいを、じゅわぁ…っとほとばしる旨味の塊である肉にぶつけると、互いが共鳴し合ってそれぞれの魅力をさらに引き出すのです。
これは本当にたまりません! クセになってしまいそう。
念願の焼き鳥に金水晶〜!
メニューに金水晶あったから速攻キメた。福島産伊達鶏の肉汁に金水晶最高✨ pic.twitter.com/P9qV1EyAQd— EMK Λ (@EMK_MrT) April 10, 2019
同じく福島市の名物である円盤餃子や、中華料理の小籠包に合わせるのも理想的です。
金水晶のお酒は、たとえペアリングの相手が黒毛和牛のステーキであろうが、赤ワインに勝るとも劣らない素晴らしいポテンシャルを示してくれるのです。これは、今後日本酒がますます国際化していくときに、非常に強力な武器となる特性ではないでしょうか。
金水晶、一人の日本酒好きとして非常にオススメの地酒です。
〒960-1241 福島県福島市松川町字本町29