復元薬師如来坐像のお顔アップ
ごっちー

約150年ぶりに蘇った薬師如来坐像を見に「史跡慧日寺跡」に行ってみた

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仏都会津の礎を築いた平安時代の僧・徳一(とくいつ)

こんにちは、神社仏閣&仏像好きのごっちーです。
会津若松市の福島県立博物館で7月6日(土)~8月18日(日)に「興福寺と会津 徳一がつないだ西と東」展が開催されます。

この夏、福島復興祈念展「興福寺と会津~徳一がつないだ西と東~」(主催:興福寺と会津展実行委員会)を福島県立博物館で開催します。 この展覧会は、福島の復興によせる興福寺さまの祈りの思いにより企画されました。興福寺さまにこの場で深く御礼申し上…

福島復興祈念展 興福寺と会津~徳一がつないだ西と東さんの投稿 2019年4月18日木曜日

 

このタイトルにも出てくる「徳一」という人物、みなさんご存知ですか? 福島県のお寺や仏像めぐりをしていると、かなりの頻度で出合う名前です。

「仏都会津」と称されるほど、会津には古刹や由緒ある仏像が多いのですが、その礎を築いたのが徳一です。徳一は平安時代初期、最澄や空海と同時代に生きた人物で、もともとは奈良・興福寺などで仏教を学んだ学僧でした。

徳一坐像
徳一坐像(写真提供:磐梯町磐梯山慧日寺資料館)

やがて徳一は東国に下り、会津の地に仏教を広めます。その拠点となったのが、磐梯山の南西麓にあった「慧日寺(えにちじ)」。徳一が大同2(807)年頃に創建したと伝わるお寺です。

かつては広大な伽藍を誇った慧日寺でしたが、度重なる戦乱や火災で衰退。今は「史跡慧日寺跡」として保存・公開されています。

金堂・中門1

慧日寺のご本尊・薬師如来坐像は「会津五薬師」の一つ、東方薬師として信仰を集めました。が、こちらも戦乱や火災で何度も焼失。そのたびに再興されましたが、明治時代に焼失して以降は再興されずにいました。

その薬師如来坐像が昨年7月、約150年ぶりに「復元薬師如来坐像」として蘇りました。そういえば復元坐像をまだ見ていないことに気づいた筆者。久しぶりに史跡慧日寺跡に行ってきました!

約150年ぶりに蘇った薬師如来坐像に感動!

駐車場に車を止め、イロハモミジの緑が鮮やかな庭園の中の道を進んでいきます。

看板

庭園

ほどなくして左手に見えてくる建物が「磐梯山慧日寺資料館」。入場券(500円、資料館と史跡慧日寺跡金堂・中門と共通)はここか、「金堂・中門」の受付で購入します。

資料館

資料館の展示や庭園を見るのは後のお楽しみにして、まずは今回のお目当て、金堂に安置されている復元薬師如来坐像を見に向かいます。庭園を抜けてのどかな農道を道なりに進むと、左手に金堂と中門が見えてきます。

金堂(写真左)と中門(写真右)は2008年に復元されました。白漆喰の壁と朱塗りの柱が青空に映えます。

金堂・中門

靴を脱いで金堂の中に入ると、いらっしゃいました、復元薬師如来坐像です。
ヒノキの寄せ木造りで、光背を含めて高さ4.2メートル。堂々たるお姿です。

復元薬師如来坐像

かつて金堂内には、徳一が創建した福島県河沼郡湯川村・勝常寺の薬師如来坐像と日光・月光菩薩立像(いずれも国宝、会津五薬師の中央薬師)の写真が飾られていました。
やはり立体的な仏様がいらっしゃると雰囲気がまったく違ってお堂らしくなりますね。いにしえの慧日寺と東方薬師様もこんな感じだったんだろうなと、想像がふくらみます。

復元薬師如来坐像

金堂内部柱

この復元薬師如来坐像を制作したのは、東京藝術大学大学院 美術研究科保存修復彫刻研究室の皆さん。監修を務めたのは「せんとくん」の生みの親としても知られる籔内佐斗司教授です。

復元にあたっては勝常寺の薬師如来坐像など、平安時代初期に造られた仏像を参考にしたとのこと。思わず手を合わせたくなるような、慈愛に満ちた良いお顔をされていらっしゃいます。

復元薬師如来坐像のお顔アップ

厳密にいうとこちらは仏像ではなく「展示物」なんだそうです。でも、感覚的にはやっぱり仏様ですね。

詳しく説明するには紙幅が足りませんが、この復元薬師如来坐像の制作にはめちゃくちゃ手間暇がかかっています。螺髪(らほつ)一つひとつに至るまで手彫りし、漆と金箔、彩色を施したうえで、長い時を経た姿を再現するために古色仕上げをする。完成までに3年の歳月を要したのも納得です。

復元薬師如来坐像衣文アップ

堂内では復元作業のようすのパネル展示のほか、約15分のVTRも流されていて、完成までの過程を詳しく学べます。ぜひチェックしてみてくださいね。

金堂内部パネル展示

広い史跡は見どころ盛りだくさん。幻想的な夏のイベントも開催!

さて、金堂を出て裏手に進むと講堂跡や仏堂跡があります。その奥には樹齢800年以上とも伝わるエドヒガン「木ざしザクラ」が青々とした葉を茂らせています。

講堂跡

木ざしザクラ

仏堂跡の脇から柵の外に出て、共同墓地の横の小道を少し歩くと「徳一廟」に至ります。お堂の中には、徳一のお墓と伝わる平安時代の五層の石塔が。昔はこの石塔を削って薬として服用するという、薬師信仰からくる風習があったそうです。

徳一廟外観

五層の石塔

広い敷地内には他にも江戸時代に建てられた仁王門、薬師堂などが点在。少し歩くと磐梯神社もあり、じっくり見ているとあっという間に時間が過ぎていきます。

仁王門

磐梯神社

来た道を戻り、磐梯山慧日寺資料館へと参りましょう。館内では慧日寺の歴史や山岳信仰、行事などを紹介。密教の法具や江戸時代の経石、雨乞い文書などの貴重な文化財も展示されています。
8月25日(日)までは企画展「写真展 徳一菩薩ゆかりの南都寺院~興福寺の至宝~」も開催中です。

磐梯山慧日寺資料館外観

続いてのお楽しみはこちら。資料館前の庭園には、ここから約1.5km(徒歩30~40分)離れた場所にある「龍ヶ沢湧水」の水が引かれています。
龍ヶ沢湧水は、日本名水百選「磐梯西山麓湧水群」の代表的な湧水池。その名水が手軽に味わえるとあって、地元の方や観光客がペットボトルやポリタンクを持って水を汲みに訪れるほどです。

龍ヶ沢湧水引水全景

澄み切ったきれいな水が滔々と流れ落ちています。飲んでみると冷たくてまろやかで、とにかくおいしい! 磐梯山の恵みの名水でのどを潤しましょう♪

龍ヶ沢湧水引水アップ1

龍ヶ沢湧水引水アップ2

最後に夏のイベントのお知らせを。7月5日(金)~7日(日)には金堂前に1,000基の灯篭が並ぶライトアップイベント「月待ちの灯り」を開催(19:00~20:30、無料)。

月待ちの灯り
月待ちの灯り(写真:ふくしまの旅観光フォトライブラリより)

また、8月18日(日)には県内のお坊さんたちが声明(しょうみょう)を披露する「ともし火と仏教声楽の夕べ」が行われます(19:00開演、500円、当日会場受付)。どちらも夏の夜にぴったりの幻想的な催しですよ。

まとめ

会津の仏教文化発祥の地・史跡慧日寺跡。福島県立博物館の「興福寺と会津 徳一がつないだ西と東」展とあわせて訪れると、徳一や仏都会津をより深く理解できると思います。

史跡慧日寺跡のある磐梯町は標高が高く、木陰や金堂内では夏でも涼しい風が吹き抜けていきます。清らかな龍ヶ沢湧水の引水や、敷地内を流れる小川のせせらぎにも癒やされますよ。ぜひお出かけくださいね。

史跡慧日寺跡(磐梯山慧日寺資料館)

福島県耶麻郡磐梯町大字磐梯字寺西38

0242-73-3000(磐梯山慧日寺資料館)

一般・大学生500円、高校生400円、小・中学生300円(磐梯山慧日寺資料館と金堂・中門の共通入館券)

4月1日~11月30日(期間中無休)9:00~17:00(受付は16:30まで)

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