地元ではコンビニやスーパーにも並ぶ日本酒が “世界一” の称号を獲得する快挙!
日本時間の2018年7月11日、英国のロンドンにて世界最大規模のワイン品評会「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)の授賞式が行われました。例年世界中から注目を集めるワインの祭典であるこの大会ですが、実は審査対象には2007年以降からは日本酒部門も創設されました。
今回で12回目となるその日本酒部門に対し、今回は過去最多となる456社1639銘柄が出品されていましたが、その中の頂点、いわば世界一の称号となる最高賞のChampion Sake(チャンピオン酒)に今回、福島の酒が輝いたのです!
おめでとうございます!!!
福島の酒がチャンピオン酒になったのは、2015年の会津ほまれさんに続き二回目の快挙となります。今年の5月には新酒観評会金賞受賞数6年連続日本一という史上初の快挙を成し遂げた福島県の酒にとって、また一つ嬉しいニュースとなりました。
今回チャンピオン酒となったのは、福島県二本松市にある「奥の松酒造」。創業300年を越える老舗であり、米国やカナダをはじめとした海外にも輸出している福島県内きっての大手酒造であります。
大手といっても、そこは銘酒処の福島県。ただ美味しいだけに留まらず、地酒らしさともいうべき個性もしっかり感じられるお酒を造っているのです。
あだたら吟醸はどんなお酒?
さまざまな技術や研究の積み重ねにより、最近の日本酒は福島のお酒だけでなく、全体的に、かつてない程に品質が高まってきています。たとえば原料となるお米から、お酒には一般的にはやや不向きと言われている味わい(いわゆる雑味)を無くしていく技法もさまざまに確立されてきました。
そのうちの一つが、精米歩合を高める(より多く削る)こと。お米をどれだけ削るかによってお酒の味は随分と変わります。ふだん食べるご飯も玄米と白米で味がぜんぜん違うのと同じですね。その精米一つとっても、最近では精米歩合1%という究極に削るようなものまで出てきました。(精米歩合1%ということは、米の中心部1%のみを原料として使い、それ以外の部分を全て削りとってしまうということです)
お酒に使うお米は削れば削るほどに純粋で透明感ある味わいが実現しやすくなりますが、原料の使える部分、歩留まりは当然低くなるので、お酒の値段もそれに比例して高額になります。
さて。「世界一」とも言える名誉を受けた「あだたら吟醸」。さぞ高級で、われわれ庶民には高嶺の花であることでしょう。
その価格は、4合瓶(720mL)入りで、なんと
1,000円です。
正確に言うと、1,080円(税込)です。福島では、コンビニやスーパーマーケットでも購入することもできます。しかも精米歩合は60%であり、なんと大吟醸ですらありません。
え? なに? 意味がわからない。冗談でしょ??
そんなお叱りを受けてしまいそうですが、これこそが福島の酒が持つ魅力の「もう一つの本懐」を発揮した成果であり、今回のIWCではその本懐が高く評価されたという特筆すべき意味も持ちます。
福島のお酒の「もう一つの本懐」とは?
福島は、たとえば新酒観評会などで評価される大吟醸中の大吟醸ともいうべき、お米を磨き抜いた酒も無論得意です。先ほどもお話したように、観評会の金賞受賞数は観評会史上初の6年連続日本一であり、この13年間でも1位と2位以外とっていません。今回チャンピオン酒となった「あだたら吟醸」を造る奥の松さんも、観評会金賞常連蔵です。
しかし福島の酒のもう一つの本懐は、地元では昔から定評のある「普通酒の旨さ」にもあります。
福島では、普通に売られている身近なお酒でも、価格の割にやたらと美味しいという強みがあります。米本来の持つポテンシャルを引き出し「香気」とでも呼ぶべきおだやかな香りと強い旨味を造り出す酒造りが、福島の酒蔵は元々とても得意だったのです。
日本酒の品質を高める技術が発展したのは、精米歩合を高める(より多く削る)ことばかりではなく、それまで「雑味」となっていた味わいを「旨味」「個性」へと転換させて活かす技も同時に進化してきました。それが、福島のお酒にさらなる進化をもたらしたのかも知れません。
実際に味わってみましょう♪
グラスに注いでみると、澄んだ綺麗な色合い。続いて、まるで瓶の中…という以上に、お酒の中に圧縮されて詰め込まれていたかのような上品な吟醸香が溢れて零れ落ちてきます。
…これが、精米歩合60%の吟醸香?
にわかには信じられません。体感としては、一般的なお酒での50~45%程度の大吟醸クラスの香りに感じられます。
しかし同時に、奥の松をはじめとした二本松の酒は特に、「炊きたてご飯のような味わい」を酒に感じさせることが得意でもあります。「米を原料としてアルコールを造った」というよりも「ツヤツヤの新米炊きたてご飯のお酒を造った」とでも表現するべき、味わいへのこの微妙な言葉のニュアンスが伝わるでしょうか。
大吟醸のような香りを感じさせると同時に、通常の大吟醸に比べて強めに感じられる、米本来の確かな旨味。これはいわば、絶妙なバランスでの香りと旨味のハイブリッド。「福島の酒、二本松の酒らしさ」を感じさせつつ食前酒からそのまま引き続いて食中酒にも使える、飲み飽きもしづらい、非常に質の高いお酒です。
思わずお酒の入っていた箱の説明書きを読むと、奥の松酒造さんでは、『日本酒業界ではほとんど普及していないパストライザー(瓶詰後殺菌設備)を導入しての火入れを行い香りと風味を閉じ込める新技術で、酒質を格段に向上させた』とあります。なるほど…。このメリットは、実際の味わいで強く感じました。
このお酒が、最高賞であるチャンピオン酒。お値段は、1,080円(税込)。…もはや驚異的ですらあります。唸らざるを得ません。
まとめ
福島の酒がまた一つ世界から評価されたことを記念して、(大変お手軽に手に入りやすかったこともあり)今回は奥の松さんの「あだたら吟醸」を詳しくとりあげてみました。
しかしこのお酒は、もともと地元では非常に身近に愛され続けてきたお酒なのです。名醸造地福島には、実はまだまだ隠れた美味しいお酒が沢山! ぜひお気に入りの一本を探しに、福島へ遊びにきてはいかがでしょうか♪