飯坂温泉の老舗「なかむらや旅館」で本当の贅沢を知る
一見素朴だけど大満足のお食事に日本酒のマリアージュ
さて、お待ちかねの夕食です。お部屋にお膳が運ばれてきました。いまどき食事は食事処でという宿が多いなか、このスタイルは本当に久しぶり。
といっても本格的な本膳料理、といった堅苦しいものではありません。ひとつ目のお膳に載っているのは、どちらかといえば家庭料理に近いものばかりです。お刺身、焼き魚、酢の物のほか、タケノコとワカメの煮物、山ウドのきんぴら、天ぷらにはウルイにタラの芽と、旬の山菜がたっぷり。どれも見た目は素朴ですが実に丁寧に作られています。
ふたつ目のお膳には、ふっくらと焼きあがった鰻と、蛤の土瓶蒸しがやってきました。これと日本酒とのマリアージュは至福の一言であります。
ちなみに、なーんと!「なかむらや」はお酒の持ち込みが自由なのです!呑べえ女子旅の今宵のお供は、福島県観光物産館で仕入れた会津の銘酒、稲川酒蔵店の「七重郎」。空瓶の背景から満足感が伝わってくるでしょうか…(笑)
最後はご飯とあら汁でしめて、デザートはフルーツ。全体に量は多すぎず少なすぎず、内容は気どりすぎることなく、さりとて物足りないこともなく。旬の地のものを使ったお食事はすべてが絶妙でした。
そして、翌日の朝食はこちら。
個人的にいちばん感動したのは、ここで手作りしているという出来立てのお豆腐です。醤油などかけず、そのままで大豆の甘味を存分に味わいました。そしてもちろん、飯坂温泉名物「ラジウム玉子」も。ヨーグルトの上には若桃の実が載っていましたよ。(注:温泉卵を当地ではラジウム玉子と呼びます)
江戸~明治時代にタイムスリップできる館内
とにかく館内はどこを撮ってもフォトジェニックで、写真の整理が大変です!以下、その一部だけご紹介しましょう。
▲総ヒノキ造りの明治館の階段▲
▲階段上から見下ろす明治館内部▲
▲江戸館から明治館へ続く廊下▲
▲見どころのひとつ、トイレの天井にはこうしたガラス絵が▲
……うーむ。こうしてみると、やはりこの空間を写真という二次元でお伝えするのはしょせん無理があると感じます。みなさん、ぜひご自身で泊まって体感してみてください。
ちなみに、総ケヤキ造りの明治館は、あの東日本大震災でもビクともしなかったのだそうです。震度5強に耐えられた理由の一つと考えられるのが、この立派な吊り柱。五重塔の心柱と同じ制振効果があるということでした。
それに対して江戸館の方は大規模半壊という事態に。一時は廃業の危機にあった「なかむらや」ですが、大女将さんの気迫と専門家の技術で、耐震補強をしつつ歴史を残した建物再生が成し遂げられたのだそうです。
まとめ
江戸時代から大火や戦火をくぐり抜け、そして此度の大震災も乗り越えた「なかむらや」。これだけの建物は、その内装も含め、いまから同じように作ろうとして作れるものではありません。現役の旅館として営業を続けるために必要な、日々の手入れも相当なものでしょう。そうやって7代にわたって受け継がれてきたのは、建物だけでなく「人をもてなす心」です。無論、「なかむらや」のパンフレットにそんなことは書いてありませんが、泊まった人ならだれもが感じるだろうと確信しました。
「贅沢=豪華/高価」というのも間違いではないでしょう。星の数がいくつとか、高級ホテル専門予約サイトに載っているとか、もちろん選択の基準として否定はしません。筆者も長い人生、そういう「贅沢」に憧れた時期もありました(笑)。けれど、飯坂の「なかむらや旅館」には、別の価値観で「贅沢」を堪能できる人にぜひ泊まってほしいと思います。
飯坂温泉なかむらや旅館福島市飯坂町字湯沢18番地
024-524-4050
1泊2食付きで大人1名あたり12,000~16,000円(消費税・入湯税別)
※予約は現在のところ電話のみ
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